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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-296:answer

変な心電図ですね。

いろいろと、屁理屈を付けて説明するより、心電図自体がおかしいんじゃないか?と疑いたくなります。 

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⭕️ R波高の著明な高値。(よほどの心疾患が有るのか?)

⭕️ ST上昇と下降が、ワイルドです。(これがACSなら、きっとLMT病変)

⭕️ これが、側壁(I, aVL)にまで、拡がっている。

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 鑑別診断です。

 重度のACS、巨大肺塞栓、大動脈解離で心タンポナーデ、AS/ARなどなど。。

 でも、元気でニコニコなんですね。

 引き継いだ研修医は、私の提案を受けて心電図解読の前に、理学所見を取りました。

 

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研修医:先生!大変です。両側の胸部術後です!(おっぱいがありません、両方とも)

私:20年の間隔で、(右→左と)乳癌手術をされているんですね。今は少なくなったけど、ハルステッドの郭清手術を行うと、広範な組織を除去するんだ。

(胸部CT像です。動画です。)

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ハルステッドの手術(乳房切除+大胸筋,小胸筋,腋窩から鎖骨下リンパ節の切除)する術式。現在は、この術式は、ほぼ絶滅している。

http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g4/q18/

 胸部電極が胸膜・肋骨・皮膚を介して、直接心臓に取り付けられる(様な)事になる。だから、常識では考え難い波形となります。

 ハルステッド法以外でも、極度のやせ(ex.COPD)では、高電位のみは、よく生じます。左室肥大では、ありません。

研修医:心電図は、患者さんを見て評価・診断なんですね。

私:そうなんだ。ぼくも、患者さん診てなかったら、びっくりしてたかも。。

(心電図の自動診断:771-6 急性の前壁梗塞:V2,V3,V4について )

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 自動診断は、横方向(時間軸)に対しては精度が高く、縦方向(波高)には鈍感であると、云われています。

 この症例でも、心電計くんは慌てたようです。

 確かに V1-4ST上昇しており、可能性はあります。V6では著明にST低下があり、なんかとんでもない事が起きてる気もします。

 しかし、心筋逸脱酵素の上昇無く、心エコーでの左室壁運動は正常で、本人も何ともありません。

 ハルステッドの手術後だとは、心電計も想像は出来ませんもんね。


 年齢・性別・見た目・聴診所見・有れば今日レントゲン所見など、

【 患者情報を持って、心電図診断しましょう 】

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