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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-290:answer

    80才代女性が、胸痛と呼吸苦で搬入でした。

    Questionにおける看護記録を読めば、ACSとして対応しているのは、バレバレですね。呼吸苦で仰臥位が保持できないために、鎮静・挿管してアンギオ(DSA)室に搬入となっております。

   ERでのちょい当て心エコーでは、心尖部のsevere hypokainesisでした。LAD病変の可能性と、たこつぼ心筋症を意識しつつの心カテ施行です。

 ここで、まずER心電図を判読してみましょう。

Ecg2904erweb


* 洞調律です。

V3-6のST上昇と、T波のちょっとした陰転化は、急性期所見です。

* よく見ると、II, III, aVFでもST上昇あります。

* でも、aVLでのミラーイメージとしてのST低下ありません。

aVRも、静かにしております。

V1でのST上昇もありません。

   これらより、LADの中間部のACSか、タコツボ心筋症であろうとの、推定で緊急心カテに入りました。  挿管・鎮静した状況での冠動脈造影です。

  ところが、次の心カテ所見を得ております。

 

Ecg2902cagprepciwebjpg


 

Ecg2903cagpostpciweb

  LMT(#5)よりLAD起始部にかけて、有意狭窄が確認されます。LCX(#11)にも狭窄あり、両方ともIVUSでの狭窄確認を行いました。

  IABPのサポート下に、PCI(stent)留置を、施行しました。

 その後、状態は徐々に改善を得ております。

  さて、重度のACSであったことを踏まえて、ERでの心電図を見直しましょう。

(Pre-PCIPost-PCIで、LADとLCXの上下関係が、逆であることに、注意されて下さい。)

 

Ecg2906erecgpciweb

(Pre/Post-PCIで、 LAD,LCXの位置関係が、逆になっているのに、ご注意下さい。)

 

  心電図だけ見ると、たこつぼ心筋症も十分に考えます。

 aVRの変化もなく、V1でのST上昇もありません。LMT病変を想像しろと云われても、難しい。但し、挿管管理が必要とされる起坐呼吸は、留意すべきポイントでした。

  とても危ない症例なのだと。

 

 次に、酵素学的変化を提示します。

Ecg2905web

    ご覧のように、BNPの上昇=心不全の出現はありましたが、CPK値自体は正常上限を超えておりません。トロポニン-I 値は一見高値ですが、単位がng/mLではなく、pg/mLであることに、ご注意下さい。

   たいした心筋壊死もなく、著明な心電図変化のない段階で、LMT病変の治療に成功した症例です。STEMIですから、経過観察はあり得なかったのですが、成功させて、ほっとした症例です。

 

  大切な教訓。

  【 心電図のみから、LMT病変は否定できない症例があることを知るべし 】

  【 ACSの重症度は、臨床dataのみならず、自分の感覚にも相談する 】

 

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