#blog-title{font-size:150%; }

Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-360:answer その1 = 心電図検定試験:傾向と対策 Q.008 =

80才代の男性で、持続する胸部不快感でER受診です。本人は、胸焼けと判断してました。

 

  *前下行枝  (LAD : Left Anterior Descending artery)

  *回旋枝   (LCX : Left Circumflex artery)

  *右冠動脈  (RCA : Right Coronary artery)

 

(今回は、右冠動脈病変の心電図です。)

 

この症例は、初回の心筋トロポニン-I値=20pg/mL,CPK=45U/Lと正常範囲内でした。

ER研修医は迷いました。逆流性食道炎の症状かも。。

 

経過観察・1時間後の再検としました。

(搬入時と1時間後の心電図)

f:id:heart2019:20200122163336j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

う~ん、、著変はありませんね。

でも、一時間後の心筋トロポニン値とCPK値は有意に上昇しました。循環器科コンサルトです。

 

すぐに駆けつけた循環器医は、

=心電図変化あるじゃん、すぐにPCIプロトコール発令だ!=

そしてER研修医に、こう云いました。

心電図がどうあろうと、リスクの多重化した患者さんの胸痛発作は、循環器コンサルトして良いんだよ、すぐに。

 

皆様方は、いかがだったでしょうか?

よくわかんない(・_・?)だった方は、以下もお読みください。

一度はやらかすER心電図です。シミュレーションで体得できれば、幸いです。心電図検定でも、出題されても不思議ありません。

(ER初回心電図の解説です) 

f:id:heart2019:20200122163451j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

 

*II, III, aVFで、ST上昇を示しています。

*II誘導は本当??気のせいじゃないの、くらいの上昇です。

*正常亜型でも、これくらいの変化はありそうです。

*しかし、aVLでのミラーイメージとしてのST低下は、強く虚血発作を支持します。

*しかも、胸部不快感の持続です。ACSじゃないと分かるまで、ACSとして対応します。この症例は、ACSでした。

*心エコーでの壁運動障害がよくわからなくても、まだ心筋酵素値の異常上昇がまだなくても、循環器科callありです!

ST上昇は、III>II誘導で、RCA病変を示唆します。

 

この時のERは、救急車連続搬入で再検がやや後手になっています。1時間は、ちょっとloss time長かったです。

 

 

 

(搬入1時間後の心電図・右室誘導付き) 

f:id:heart2019:20200122163538j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

*どうでしょう、右側胸部誘導でのST上昇に、同意頂けますか?

肢誘導・右側胸部誘導・後壁誘導(V7,8,9)は、もともとQRS電位も低めに出やすいです。全体の電位が低いと、ST上昇も直感的には認めにくくなります。

*場数を踏んでないと、すぐに気付く・自信を持ってST上昇を指摘する・・はやっぱり大変だと思います。

 

急性下壁梗塞時に、aVLでのミラーイメージ(ST低下)が起きる事を、明瞭に述べている書籍を見たのは、山下武志先生の2002年11月に出版された

 

心筋細胞の電気生理学―イオンチャネルから、心電図、不整脈へ (ベッドサイドのBasic Cardiology)

f:id:heart2019:20200122163630j:plain

 

でした。自分が経験的に思っていたことが、言語化されていると感動した覚えがあります。

 

 

いまでも完全に使える書籍です。

 

冠動脈造影/PCIは、次のような結果でした。

f:id:heart2019:20200122163728j:plain

クリックすると、拡大します

 けっこう大きな回旋枝です。下側壁まで十二分に潅流しています。

 

 

f:id:heart2019:20200122163913j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

 

 

 

 

RCA #2の病変でした。PCI(STENT)で治療完了しました。

左室への潅流は4PD(後下行枝)に限局されています。

洞結節領域への血流は阻害されていない(ハズ)です。

 

慣れないと、心エコーでの壁運動障害が指摘できないかもしれません。

伝導障害は生じません。

右側胸部誘導がST上昇を示しても、右心不全が起きるとは限りません。左室梗塞の全てが心不全になる訳ではないのと同じです。

 

持続する胸痛発作では、この程度の心電図変化にも敏感に反応してください。ハズレは、ERでは許容されますから。

 

 

(心電図変化の時系列です) 

f:id:heart2019:20200122163942j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

 

 

RCA-ACSのST-T変化は、一見微妙な事がある 】

【 持続する胸痛患者でミラーイメージの存在は、ACSである 】

 

次回、RCA-ACSのバリエーションです。