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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-390:answer(2/2) 激烈な胸痛でER受診となった20代男性 心エコーのポイント

3病日目の朝まで、胸痛は続きます。

アセリオ(アセトアミノフェン注)・ペンタゾシン注も一時的効果しかありません。

 

血圧が低下し、呼吸が出現し、頻脈が続きます。

HCUですぐに、心電図と再度の心エコーです。 

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クリックすると、心電図が拡大します

 

 

*初日とあまり変化有りません。

*V1-3で r波が無くなりました。V1でST低下あります。

ACSもやっぱり気になります。

 

もう一回心エコーです。

 

 

(2病日3病日の左室長軸像) 

 

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(2病日3病日の左室短軸像) 

 

 

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ショック状態に進行しており、まず心のう液のドレナージを行いました。穿刺液は、黄色透明で、血性でも膿状でもありません。

 

心エコーの所見を振り返ります。

 

*心のう液の貯留量は増えています。

*もともと左室の収縮性は低下しています。

*いわゆる、下後壁の壁運動が著明に低下です。

*心のう液貯留のため、swinging-heartで動きは一見よく見えます。

心タンポナーデで凹むのは右室です。(左室が凹む前に、ショックとなります)

*でも、気付くべき所見は心筋の膨化(浮腫性変化)です。浮腫状に見える。

 

 心筋炎で心外膜に炎症が及ばないのはないし、心外膜炎でも外膜側心筋に炎症が及ぶ。心電図で、この鑑別はできません。(VT出まくれば、心筋炎の存在を疑いますけど)

 

しかし、こんなに早く悪化するとは。

心のう液穿刺で一旦血圧上昇するも、突然の心停止です。

 

ICUでの蘇生→PCPS挿入→CAG intact→IABP導入。

*人工呼吸器管理、血漿交換etc.

*オノアクト・hANPの助けも借りました。

 

 

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(心筋酵素系の経時的変動です。)

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クリックすると、拡大します

 

 

大変でしたが、見事にADL自立・精神障害なしで、独歩退院となりました。パチパチ(私の仕事ではないんですけど、皆頑張りました。もちろん、患者さんも。)

 

 

 

もうちょっと、評価しました。

(IVC径の経時変化です)

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クリックすると、拡大します

 

 

 

最後に、発症時と、15カ月後の心エコーを対比します。

  

急性期15ヶ月後) 

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ST上昇は心膜の炎症のみに由来するとは限らない。心外膜直下の心筋炎症も多少はあるだろう。急性心膜炎の実態は心筋心膜炎だと教わった。

p-195:循環器治療薬ファイル(第3版) @村川裕二先生

 

 

心筋炎(+心外膜炎)の劇症タイプでした。

教訓。。

 

【12誘導心電図で、心外膜炎を診断して安心しない。勝負はそこからです】

 

 

今回は、共同著者の佐々木達哉先生に、この症例へのメッセージを頂きました。いつも、いろんな事を教わっています。(大阪におけるうどんの立ち位置までご教授されました)

 

では、佐々木先生宜しくお願いします。

 

拝見しました。
 
激症の心筋炎からよく後遺症なく回復しましたね。集中治療の賜物だと思います。心タンポナーデ発症は心嚢液の量ではなく、心嚢液の溜まるスピードがkeyなのでしょうね。心嚢液ドレナージ直後に心停止は私も経験があります。なぜだかわかりません。
 
 
違和感があった点を列挙します。
1. 搬送時のTnI異常高値から、やはり心筋炎を考えるべきだったと思います。考えたところで、で、対策は?と言われると、画期的な対策はないのですが、、、、、
 
〔ERの研修医は、pericarditisとして循環器科callしました。循環器医は、今後悪化する可能性のある心筋/心膜炎として、入院加療の方針としました。患者さん説得は、けっこう大変でした。。〕
 
 
2. Mil+Landiololは経験がないのでわかりせんが、血圧は保たれていたのでしょうか?
 
〔幸い血圧の回復が認められ、薬物介入の余地がありました。〕
 
3. 心筋炎という前提なら、hANPとかpimobendan(抗サイトカイン)はあったかも知れませんね。
〔Pimobendanによる抗サイトカイン効果の可能性は、新たな学びですφ(..)。〕
 
 
佐々木先生の著書