60才代男性の昨日から続く胸部不快感でのER受診でした.
ER心電図を解析しましょう。
*洞調律か??(P波があるような、ないような。。)
*下壁誘導で、異常Q波とST上昇あり。
→ III-ST上昇 > II-ST上昇
*aVLでのST低下(ACS-下壁のミラーイメージ)
→これは、RCAでもLCX(遠位側)でも発生有り得る。
*V1のSTが何となくST上昇してる。。
→これは、右室梗塞の可能性を示唆する。
*僅かだが、右側胸部誘導でST上昇を認める。
*V6でのST上昇はない。
これらを全て説明するには、
◎右冠動脈 近位部閉塞でないと、ムリがあります!
△RCA-distal閉塞では、V1-3にミラーイメージのST低下が生じやすい。
△回旋枝の遠位部閉塞で、下壁誘導のST上昇とaVLでのST低下は説明できるが、
【 III-ST上昇 > II-ST上昇】
【V1のSTが何となくST上昇】
【LCX病変での、徐脈・房室ブロックは極めて少ない】
の点が、合わない。
▲Wrraped-LAD遠位部閉塞では、
【心尖部心室瘤で、V3-6のST-T変化・異常Q波があるはず】
実際のCAGです。RCA起始部の完全閉塞でした。
あらゆる処置を試みるも(ballooning,血栓吸引,stent留置)、再疎通出来ませんでした。
左冠動脈を見てみましょう。
さほど大きくはありませんが、LCXはしっかりとあります。
V5,6を支配しているようです。
シンプルな RCA proximal obstruction with RV infarctionの症例でした。
なお、この症例はPCI後は cardiac standstill となって、一時期all VVI pacingとなっておりました。ACSでの刺激伝導系障害は、殆どの例で数日後に治ります。刺激伝導系は、虚血発作にかなり強いんですね。作業心筋と異なり、伝導のみなのでATP消費も少ないようです。また、血行二重支配も多いんです。
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佐々木達哉先生との共著が、2020/1/23に発刊されました。
日本医事新報社からです。重版されました。
循環器版の(思考のレッスン)です。
村川裕二先生から、素敵な(推薦の辞)を頂きました。
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