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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-103:answer


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ECG-103:71才女性の心電図異常を考えます。

 

f:id:heart2019:20201103235355j:plain

クリックすると、心電図が拡大します
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◎ 洞調律です。
◎ V1-5は、QS-pattern & ST上昇。
◎ CLBBBではない。上記のST上昇は、脚ブロックの2次性変化ではない。
◎ II, III, aVFに、Q波有り。
◎ I 誘導も小さなr波を残すだけ。V6と共に、ST上昇有り。
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 最も顕著な所見は、V1-4のST上昇が著しく、広範囲前壁梗塞であることは、明白です。
 これだけのST上昇だと、心筋障害はたぶん回復不能かと思われます。PCIが成功した直後に、このようなST上昇が出現することがあります。出血性梗塞時など。
 心室瘤は、おそらく存在し、心破裂のリスクも高い状況です。(注:ST上昇=心室瘤ではないので、気をつけて下さい)事実、心エコーでは、巨大な心室瘤でした。
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 しかし、初日のCPK=365が最高値で、しだいに低下してしまいました。
 これだけの心電図変化と心エコーでの壁運動障害が、Acuteに発生しているのならば、CPK最大値は数千以上に上るのが自然です。でも、トロポニン値は優位に上昇しています(15.5)。解釈してみましょう。
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1).  これは、陳旧性心筋梗塞であった。
2).  発症数日以上経過した亜急性期の心筋梗塞で、逸脱酵素の低下時期を初回に捕まえただけであった。
3). この数日間、患者は自宅で伏せている状況であった。この間に血圧低下・不整脈発作が出現し、脳血流が低下して、脳梗塞を併発した。(いわゆる心脳卒中)
4).  摂食もできず、相対的脱水状態であったことが、顕性の心不全出現を、偶然にも抑止していた。
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 他のストーリーも構築可能でしょう。残念ながら、最近の心電図は入手できませんでした。(比較ができない)
 見ただけで、広範囲前壁心筋梗塞と断定できる心電図で、発症数時間以内は、たぶん否定的です。でも、発症時期に関しては、病歴・心筋酵素の経時的推移・心エコー所見などを総合しないと、よくわからないことがある。最後までわかんないこともある、が今回のTips(教訓?)でした。
 
心筋トロポニンが、ng/mLの単位だった頃のお話しです。10以上(二桁)になると、死亡率が高い!と云っておりました。
脱水状態だったが故に、心不全とならなったrecent MI(=遅れMI)は、高齢者で時に遭遇します。(2020/11/3に追記)
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