ベクトル心電図と云う考え方、をご紹介します。
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なお、今回は和田敬先生のご許可を頂き、(新しい心電図とその解説)より、図譜をお借りしております。和田先生、ありがとうございます。
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ベクトル心電図自体の臨床現場での利用は、平成に入ってからは事実上ありません。私も、今ではよく読めなくなっています。でも、その発想は素晴らしく・・と云うか、12誘導心電図も、心筋起電力のベクトルを、縦軸電位(プラス・マイナス):横軸時間軸(通常は25mm/sec.)で描いたものに過ぎません。12の方向より見ているのが、偉いとこなんです。
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ベクトル心電図的に、通常心電図を考えてみます。
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胸部誘導(V1~V6)は、其々の位置から、このQRS水平面ベクトル環を見ている訳です。
継時的に、ベクトルは近づき・そして離れていきます。(逆もある)
QRS高は、ベクトルの長さ(起電力)を意味します。
* 胸部誘導は、心筋の興奮が終わると、基線に戻ります。
*ベクトル環は、心筋の興奮が終わると、原点に回帰します。
表現は異なれど、最初の一歩(その1)と、同じことを云っています。
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では、正常心電図と左室肥大の心電図で、比較してみましょう。
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(青バックの上図):正常胸部誘導では、R/S比は、なだらかに移行して、V5を最大R高としています。ST-Tも穏やかです。各々の誘導の位置から見ると、ベクトル環が近づき、離れていくのが分かりますか?
(赤バックの下図):胸部誘導の高電位・ストレイン様のST-T変化で、左室肥大は、納得ですね。R/S比は、急激な変化を示します。また、V4のQRS高は、極端に低くなっています。次の図で考えてみましょう。
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左室肥大のQRSベクトル環は、後方におおきく突出しています。
V1では、これが大きなS波の形成理由です。
V6では、大きなR波の形成理由ですね。
V4から見ると、左室の興奮は横方向に通り過ぎるイメージです。プラスにもマイナスにも、波高は小さくしか触れないわけです。左室肥大では、V3,4あたりの誘導の波高が妙に低いことが多いのですが、これで理解できます。(気にならない方が、多いとは思いますが。。)
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左室肥大時には、ベクトル環のダイナミックな変化により、(移行帯の急変)が生じることが、よくあります。
また、R波高も急に高くなります。ここは、前壁中隔梗塞と勘違いしないように留意すべき点です。(まず、心エコーでの壁運動チェックです)
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ベクトル心電図としての考え方は、如何だったでしょうか?
12誘導心電図の理解に、私はとても有用でした。(ベクトル心電図のみでの臨床診断は、慣れない者には困難な作業だとしてもです。)
和田敬先生の著書の図をお借りしなければ、解説は困難でした。ご快諾を頂き、感謝です。