見慣れない右側胸部誘導について、まとめてみました。
日頃、見慣れていないものは、いざと云う時に、適確な診断が出来ません。正直、私もあんまり見てません。これを機に、お復習いしてみます。
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CT断層面を見ると分かるのですが、V3R-5Rと、心臓からどんどん離れて行きます。こんなに離れた場所に電極付けて、本当に診断して良いの?なんて、思ってしまいます。
V3R-5Rは、右室肥大でもなければ、QRSも低電位です。よって、ST-T変化も低電位が基本です。肺に低圧で血流を送るだけの右室壁は、元々薄いので、高電位はでません。
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これらの知識を納得した上で、心電図を見てましょう。
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まず、正常(健常人)の場合です。
* V1→V3R→V4R→V5Rと、 波高はどんどん小さくなりますね。
* 波形自体は、そでもあんまり変わりません。
* STの有意な上昇はないでしょう。
日頃から、問題のない症例での右側胸部誘導を、沢山見慣れておいて下さい。
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次は、RCAの起始部完全閉塞の症例です。
* もともと、V1,2でのST上昇が明瞭です。LAD病変と勘違いするかもしれませんが、V3R-5RでのST上昇と連続していることで、右室梗塞の表現であることが、わかります。これくらい、きちんとST上昇を示してくれると分かりやすいんです。
* ST上昇のまま、V3R-5Rの形はあんまり変わっていません。左側胸部誘導との違いですね。
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今度は、RCA起始部完全閉塞 + LAD/LCX病変 + LMT病変の症例です。
* この症例は、基本的にLMTが問題です。RCAは、おそらく慢性閉塞です。しっかりした側副血行路が、確認されています。
* Jeopardized-collateral circulation の状態です。RCAへの血流が極度に低下しており、心電図上のST上昇というわかりやすい虚血が、II, III, aVFで認められます。
* 右側胸部誘導では、V3RのST上昇が確認できます。他は、上昇している気がちょっとする。。(記録時の基線の安定化は、絶対的条件です。)
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V4RのST上昇が、感度・特異度もっとも高いとする見解もあるようですが、細かくこだわるより、ぱっと見て、ST上昇有り!と感じ取ることが、大切だと思います。この辺、evidence-besedに拘っておりません。
なお、V1= V2R のはずだ、となるのですが、同じ場所につけた電極を、別の名で呼ぶような野暮なことは、止めときましょうね。
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まとめて、提示しましょう。(正常例を、もうひとつ追加してます)
右側胸部誘導(V3R-5R)と背側誘導(V789)を、全例で記録するのは、なかなか面倒ですし、臨床的意義もありません。
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当院では、医師又は技師が、ACSの可能性を考えると、「ACS心電図記録します!」と宣言して、通常12誘導+右側胸部誘導(V3R-5R)と背側誘導(V789)の記録を開始します。ショック状態等で、1分程度の記録時間延長が難しくなければですが。
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なお、最近の心電計は、右側胸部誘導(V3R-5R)と背側誘導(V789)を、計算された合成波形として、提示してくれるようです。(当院には、まだ有りません。お持ちの病院が、羨ましいです。。)
右側胸部誘導について、まとめてみました。あ~、スッキリした。
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