++2018/10/6に、岡田保紀氏の助言を頂き、図譜の改編を行っています。感謝です。++
高カリウム血症の心電図変化は、
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◎高カリウム血症で、静止膜電位が上昇する。
◎Naイオンの細胞内流入が遅くなり、QRS幅が広くなる。
◎一方、再分極を起こすKチャネルは開きやすくなり、急速にKイオンが細胞外に流出する。T波が増高し、狭くて先鋭化する。
◎心房筋は、最初に動けなくなり、P波は消失する。(でも、心房内伝導は残っている。( sino-ventricular conduction / rhythm )
◎最後には、サインカーブ化して、心停止となる。
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これが、高カリウム血症の心電図変化の普通の説明です。
細胞膜の電気的興奮は、0→1→2→3→4相と別れます。
3相はカリウムチャネルの外向き電流のお話しです。
カルシウムチャネルの内向きCa2+イオンの流れが静まると、カリウムのチャネルの外向きの流出が強まります。(3相です)
図にあるように、カリウムチャネルは、脱分極中は終始(だらだらと)外向きにK+イオンを流しています。
再分極を担うカリウムチャネルは重要なので、一つのチャネルに任せるのは大変だ!として、多数のチャネルがあるんだそうです。
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なお、各々のカリウムチャネルを覚えることは、あまりお勧めできない。いろいろあるんだ~。大変だね~、くらいにしましょう。
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このあたりの事情を、深く知りたい方は、山下武志Dr.のこの本を読むしかありません。
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https://www.amazon.co.jp/心筋細胞の電気生理学―イオンチャネルから、心電図、不整脈へ-ベッドサイドのBasic-Cardiology-山下-武志/dp/4895923185/ref=sr_1_13?ie=UTF8&qid=1538230977&sr=8-13&keywords=山下武志
さて、多くの方が、以下の疑問をお持ちのはずです。
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Na+イオン、Ca2+イオンは、どんどん細胞内に入る。
K+イオンは、どんどん細胞外に流れ出る。
(電解質の収支が、合わないじゃないですか?)
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イオンチャネルは、電解質の濃度差に依存して流れるので、確かにご指摘の如くなんです。
そこで辻褄を合わせているのが、エネルギーを使ってイオンの出し入れを行うイオンポンプなんです。
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Na+/K+交換系
Na+/Ca2+交換系 (逆回転あり reverse model)
Na+/H+交換系
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などがあり、バックグランドでイオンの細胞膜レベルでの出入りを調節しています。とだけ、覚えてください。
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さて、一番厄介ななのが、残りました
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Ik1
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内向き整流型K+チャネルの一つです。
この(内向き整流)の名前が、混乱を生じさせます。私は、かなり悩みました。普通は外向き電流を流すんだけど、時に流れないし、場合によっては内向きにも流れるんだよ、と云う不思議なチャネルです。
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(卓袱台返しですが・・)
Ik1は、非電位依存性チャネル である!
* 再分極を完了させる。
* 静止膜電位の維持。
が、Ik1チャネルのお仕事です。
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高カリウム血症では、主にIkrとIk1が、テント状テント状T波形成に関与します。
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やれやれ、ここまで正常の心筋細胞の電気生理学を説明して、やっと高カリウム血症での心電図変化の説明となります。
長くなったので、次回でラストです。
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