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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

【コラム-103-ECG GURUより Supraventricular Tachycardia in Pediatric Patient With Wolff-Perkinson-White Syndrome の意訳と図譜の追加です】

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https://heart2019ecg.hatenablog.com

Ecggururogologo

 

 

 

 

 

https://www.ecgguru.com/ecg/supraventricular-tachycardia-pediatric-patient-wolff-parkinson-white-syndrome

 

 このサイトは、心電図の教育を目的としており、その目的で自由再利用を許可されています。感謝です。一部を省略しつつ、意訳で提示します。原文は上記へアクセスされて下さい。

 

 私が追加するコメントと図は、ブルーで表示します。

 

 

13才の男子。基本は洞調律。頻拍時の心電図を提示します。

 

 

 

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クリックすると、ECGが拡大します。

 

 

 

(頻拍の診断を、お願いします)

 

 

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 診断は、できましたか?

 矢印の部位に、逆行性P波(retrograde-P`)を認めます。

 よって、WPW症候群によるorthodromic AVRTとなります。

 

orthodromic AVRT(WPW症候群で、ケント束を逆伝導するSVT)

 

 

(筆者による作図) 

 

 

 

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クリックすると、ECGが拡大します。

 

 

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Ken Grauer, MD 氏のコメントより。

(この先生の ECG-2014-Pocket Brainと云う著書を、電子本で購入しました。)

 

13才の男子のnarrow QRS tachycardiaの症例です。

 

WPW症候群の存在を知らないで、このnarrow QRS tachycardiaの解釈が出来るのか?

(事前の心電図情報が無くても、これがAVRTと確信できるのか。)

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1st-step

 まず、きちんと波形を見てましょう。(血行動態が安定しいるのは、確認してね。)

 洞性のP波がないHR=150bpmのnarrow QRS tachycardiaで、整脈です。この症例では、

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II 誘導で上向きのP波が無い。

I 誘導でflutter様の波があっても、他の誘導ではない。

 

(II,III,aVFに、F波がありません。AFLは考えにくいですね。)

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 心電図診断は、リエントリー性のSVTが妥当でしょう。

 (SVT : SupraVentricular Tachycardia)

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以前は=今もよく使われますが=PSVTと呼ばれていました。これは、頻回に突然起きる上室性頻拍と云う意味です。

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(PSVT=Paroxysmal SupraVentricular Tachycardia)

〔私的注:発作性上室性頻拍は、成因論なしで、とにかく上室性頻拍になっている状態です。心房細動/心房粗動は除きます。通常は、AVRTとAVNRTの二つを意味しますが、ATも含んだりと、定義が人によって揺らぐという困った問題があります〕

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(AVRT=AtrioVentricular Reentrant Tachycardia)

 =〔または〕AtrioVentricular Reciprocating Tachycardia

(AVNRT=AtrioVentricular Nodal Reentrant Tachycardia)

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 新しい用語として、AVNRTAVRTが、登場しました。

〔私的注:成因論による分類です〕

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 AVRTにおいて、

 

*Orthodromicは、房室結節を下降するリエントリーのこと。

    →WPWにおける90-95%を占めます。

*Antidromicは、副伝導路を下降するリエントリーを意味する。

 

 なお心房細動・心房粗動を合併したWPW症候群のリスクは、とても高くなります。

 

(Afib. AFL → Vfへの移行!!)

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(このケースでの)PEARLは、逆行性のP波をいくつかの誘導で見つけることです。

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 逆行性P波は、下壁誘導(II,III,aVF)で陰性P波を示します。

 そして、aVR & V1で陽性P波となります。

 この五つの誘導で逆行性P波は、よく見つかるんです。

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 RP`間隔(RP` interval)は、相対的に長い!ことに注目します。これは、ケント束を含むリエントリー回路では、AVNRT(房室結節での旋回路)より、大きな=マクロな=リエントリーを形成するからです。

 通常、orthodromic AVRTでは、STの後半部分に(in the latter portion of the ST segment)逆行性P波が出現して、副伝導路の存在を示唆します。

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Jerry W. Jones MD FACEP FAAEM 氏のコメントより。

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 AVNRTAVRTの鑑別は、心電図上での戸惑いをよく生みます。初心者ならずともです。 

 

 まず、名前が似すぎています。次に、よくよく見ないとリズム・波形もそっくりです。

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 AVNRT(マイクロリエントリー)では、心房と心室の興奮がほぼ同時に起きる。よって、逆行性P波は、ほぼ見えない。(QRSの中に、P`波は埋もれてしまいやすい)

 もし見えるとするならば、小さな s 波(pseudo-s waves)が下壁誘導に、小さな r` 波(pseudo-r` waves)が V1に認められる。

  (pseudo-s waves)は、下壁誘導のQRSの最後くっついて一つにに見える。でも、じっくり見ると、

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you will frequently see a slight "jog" or slurring between the end of the QRS complex and the pseudo-s wave.

(QRS末端に、僅かなブレ・スラーとして、pseudo-s wavesを認める:意訳)

 

“jog”のよい訳が分かりません(-_-;*)

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 (pseudo-r` waves)は、V1にてS波の最後の上行部に直接繋がった小さなr`波として認める。これは、IRBBBのように思えます。 (IRBBB:不完全右脚ブロック)

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 (pseudo-s waves)も、(pseudo-r` waves)も、QRSのくっついていることを、忘れずに。

 

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(筆者による作図) 

 

 

 

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クリックすると、ECGが拡大します。

 

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(筆者による作図) 

 

 

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クリックすると、ECGが拡大します。

 

 

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(洞調律化すると、pseudo-r,pseudo-sが消えます。)

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 AVRTでは、旋回路はもっと大きい(マクロリエントリー)心室の興奮後に、心房の興奮は起きる。それゆえ、逆行性P`波はQRSとは分けて出現する。ST部分のどこかにあるんです。通常はT波の前半に認められます。でも、ST-Tの曲線の中にブレンドされると、よく分からなくなりますね。

 下壁誘導では陰性P`V1では陽性P`I 誘導では陽性/平坦なP`を示すことを、思い出して下さい。

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narrow QRS tachycardiaを見た場合、以下の様に割り切りましょう)

 

*洞性頻脈(P波の存在に注意!)

*心房粗動(2:1伝導 or 1:1伝導)

*頻拍性心房細動(けっこうSVTと間違えます)

AVNRT

AVRT

◎その他、分からなくてもシャーナイヤロー!!

 

 最後にAVNRTAVRT鑑別で悩んだときに、上記の二人の達人のコメントを思い出して下さい。

 頻脈時の心電図と停止後の12誘導心電図を、必ず比較してね。

 

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