https://heart2019ecg.hatenablog.com
このサイトは、心電図の教育を目的としており、その目的で自由再利用を許可されています。感謝です。一部を省略しつつ、意訳で提示します。原文は上記へアクセスされて下さい。
私が追加するコメントと図は、ブルーで表示します。
13才の男子。基本は洞調律。頻拍時の心電図を提示します。
クリックすると、ECGが拡大します。
(頻拍の診断を、お願いします)
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診断は、できましたか?
矢印の部位に、逆行性P波(retrograde-P`)を認めます。
よって、WPW症候群によるorthodromic AVRTとなります。
orthodromic AVRT(WPW症候群で、ケント束を逆伝導するSVT)
(筆者による作図)
クリックすると、ECGが拡大します。
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Ken Grauer, MD 氏のコメントより。
(この先生の ECG-2014-Pocket Brainと云う著書を、電子本で購入しました。)
13才の男子のnarrow QRS tachycardiaの症例です。
WPW症候群の存在を知らないで、このnarrow QRS tachycardiaの解釈が出来るのか?
(事前の心電図情報が無くても、これがAVRTと確信できるのか。)
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1st-step
まず、きちんと波形を見てましょう。(血行動態が安定しいるのは、確認してね。)
洞性のP波がないHR=150bpmのnarrow QRS tachycardiaで、整脈です。この症例では、
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*II 誘導で上向きのP波が無い。
*I 誘導でflutter様の波があっても、他の誘導ではない。
(II,III,aVFに、F波がありません。AFLは考えにくいですね。)
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心電図診断は、リエントリー性のSVTが妥当でしょう。
(SVT : SupraVentricular Tachycardia)
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以前は=今もよく使われますが=PSVTと呼ばれていました。これは、頻回に突然起きる上室性頻拍と云う意味です。
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(PSVT=Paroxysmal SupraVentricular Tachycardia)
〔私的注:発作性上室性頻拍は、成因論なしで、とにかく上室性頻拍になっている状態です。心房細動/心房粗動は除きます。通常は、AVRTとAVNRTの二つを意味しますが、ATも含んだりと、定義が人によって揺らぐという困った問題があります〕
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(AVRT=AtrioVentricular Reentrant Tachycardia)
=〔または〕AtrioVentricular Reciprocating Tachycardia
(AVNRT=AtrioVentricular Nodal Reentrant Tachycardia)
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新しい用語として、AVNRTとAVRTが、登場しました。
〔私的注:成因論による分類です〕
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AVRTにおいて、
*Orthodromicは、房室結節を下降するリエントリーのこと。
→WPWにおける90-95%を占めます。
*Antidromicは、副伝導路を下降するリエントリーを意味する。
なお心房細動・心房粗動を合併したWPW症候群のリスクは、とても高くなります。
(Afib. AFL → Vfへの移行!!)
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(このケースでの)PEARLは、逆行性のP波をいくつかの誘導で見つけることです。
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逆行性P波は、下壁誘導(II,III,aVF)で陰性P波を示します。
そして、aVR & V1で陽性P波となります。
この五つの誘導で逆行性P波は、よく見つかるんです。
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RP`間隔(RP` interval)は、相対的に長い!ことに注目します。これは、ケント束を含むリエントリー回路では、AVNRT(房室結節での旋回路)より、大きな=マクロな=リエントリーを形成するからです。
通常、orthodromic AVRTでは、STの後半部分に(in the latter portion of the ST segment)逆行性P波が出現して、副伝導路の存在を示唆します。
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Jerry W. Jones MD FACEP FAAEM 氏のコメントより。
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AVNRTとAVRTの鑑別は、心電図上での戸惑いをよく生みます。初心者ならずともです。
まず、名前が似すぎています。次に、よくよく見ないとリズム・波形もそっくりです。
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AVNRT(マイクロリエントリー)では、心房と心室の興奮がほぼ同時に起きる。よって、逆行性P波は、ほぼ見えない。(QRSの中に、P`波は埋もれてしまいやすい)
もし見えるとするならば、小さな s 波(pseudo-s waves)が下壁誘導に、小さな r` 波(pseudo-r` waves)が V1に認められる。
(pseudo-s waves)は、下壁誘導のQRSの最後くっついて一つにに見える。でも、じっくり見ると、
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you will frequently see a slight "jog" or slurring between the end of the QRS complex and the pseudo-s wave.
(QRS末端に、僅かなブレ・スラーとして、pseudo-s wavesを認める:意訳)
“jog”のよい訳が分かりません(-_-;*)。
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(pseudo-r` waves)は、V1にてS波の最後の上行部に直接繋がった小さなr`波として認める。これは、IRBBBのように思えます。 (IRBBB:不完全右脚ブロック)
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(pseudo-s waves)も、(pseudo-r` waves)も、QRSのくっついていることを、忘れずに。
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(筆者による作図)
クリックすると、ECGが拡大します。
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(筆者による作図)
クリックすると、ECGが拡大します。
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(洞調律化すると、pseudo-r,pseudo-sが消えます。)
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AVRTでは、旋回路はもっと大きい(マクロリエントリー)。心室の興奮後に、心房の興奮は起きる。それゆえ、逆行性P`波はQRSとは分けて出現する。ST部分のどこかにあるんです。通常はT波の前半に認められます。でも、ST-Tの曲線の中にブレンドされると、よく分からなくなりますね。
下壁誘導では陰性P`、V1では陽性P`、I 誘導では陽性/平坦なP`を示すことを、思い出して下さい。
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(narrow QRS tachycardiaを見た場合、以下の様に割り切りましょう)
*洞性頻脈(P波の存在に注意!)
*心房粗動(2:1伝導 or 1:1伝導)
*頻拍性心房細動(けっこうSVTと間違えます)
*AVNRT
*AVRT
◎その他、分からなくてもシャーナイヤロー!!
最後にAVNRTとAVRT鑑別で悩んだときに、上記の二人の達人のコメントを思い出して下さい。
頻脈時の心電図と停止後の12誘導心電図を、必ず比較してね。
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