(前回までのあらすじ )
後期研修医(のあなた)は、心電図を素直に読んで、RCA-ACSとの予測のもと、指導医医と緊急カテに望んだ。
しかし、コントロール造影で思わぬ展開へ。。
後期研修医のA君:心の声
「あれ・・右冠動脈(RCA)は、intactじゃん。どこ治療すればいいの?」
実際は寡黙な指導医が、とっととPCI施行しましたが、ここはあり得ない研修医と指導医のカテ室会話で、解説を進めます。
循環器科成り立ての後期研修医A君
大阪弁の指導医 S先生
A君「S先生、RCA intactです。診断間違いましたかね?」
S 先生「ACSの診断、まちごてないで。このままPCI開始や。」
A君「でも、どこが責任病変やら。。」
S 先生「よー、見てみ。コントロール造影で、おかしいとこ有るやろ?」
A君「ええ、気になるのはLCA-LAO viewで、LADとLCXの間がなんか血管に乏しいんです。」
S 先生「ええとこ、いってるやん。もう一声!」
A君「LADから、自由壁方向に突き出して見えるのは、潰瘍化した動脈硬化病変でしょうか。」
S 先生「ちゃうで。」
A君「では、第一対角枝(D1)の完全閉塞でしょうか?」
S 先生「当たりや。それを説明する追加所見はあんのんか?」
A君「え~と、造影後半で逆行性にD1末梢が描出されています。」
S 先生「えらいぞ!それでこそ、我が弟子や。他にもなんかあらへんか?」
A君「LCXが、なんか小さいですね。。」
S 先生「RCAが小さい。LCXも小さい。III,aVFでST上昇してる。なんかおかしないか?下壁のACSは、間違いないんやで。」
A君「回旋枝は・・あっ#13で詰まってる。」
S 先生「そう。で、どっちが責任病変や?D1と#13と?」
A君「#13(LCX)は、なんか閉塞部位がモヤモヤしてます。出来たての血栓でしょうか?」
S 先生「シネ画像上からも、#13責任病変間違い無しや。PCI始めるでぇ」
#13へのPCI終了後のカンファ室での会話
A君「ICUで、患者さん安定してます。胸痛なし・不整脈発作なし・バイタルサインも安定です。」
S 先生「ほんなら、ER心電図をもう一回見直しや」
A君
* 洞調律です。
* III, aVFのST上昇あり。
* aVLでのST低下で、これをミラーイメージとすれば、ほぼACS確定。
* でも、V2-6・I 誘導でもST低下(strain pattern?)が有ります。ちょっとこの説明が難しいです。
S 先生「確かに、そうや。できるだけ解釈してみると、」
* LCX13は、大きく下後壁へ回り込んでいる。
* RCAは4PDまでで、さほど大きくない。
* I,II,III,aVFのST 上昇の具合で、責任病変を確定しにくくなっている。
* しかし、今回はLAD(D1)か、LCX(#13)かの鑑別であった。
* 心電図上も、D1のACSでは説明困難である。
* V2-4のST低下は、後壁のACSミラーイメージかもしれない。
A君「でもLCX病変ならば、I,V6誘導でST上昇して欲しいですよね。」
S 先生「そこ説明しんどいんや。しゃあないで、心電図だけ全部を説明でけへんわ。」
一週間後の回診にて
A君「特に著変無く経過しています。当初よく聞こえていたS4も、聞こえにくくなりました。」
S 先生「心電図の経時的変化は、どや?」
A君「X,X+1,X+6 dayの心電図を提示します。」
* III,aVFは、ほぼQS patternとなりました。
* II,III,aVFで陰性T波となりました。
* V2,3で明らかにtall-T波となり、後壁の冠性T波ミラーイメージを示唆します。
* I 誘導のstrain pattern様のST-T変化は無くなりました。
S 先生「#13のACS経時的変化で、ええな。D1が完全閉塞なんもその支配領域の虚血増強が、複雑に前壁のST-T変化を起こしていたのかも知へんで。」
A君「あの〜S先生の大阪弁、おかしくないですか。」
(上記の関西弁は、nativeの先生にご指導頂きました。河内弁versionとのことです。変に思えましたら文責は、わたしです。)