from ECG-271の解説です。
胸部不快感で来院した70才代女性です。
そろそろ、解読できるようになりましたか?
(何のことだ?と仰有る方は、下記からお入りください)
https://heart2019ecg.hatenablog.com/entry/2019/12/30/192001
心電図を解読してみます。
*V5,6とI 誘導でのST上昇 → 側壁のACS。
*V1,2,3でのST低下 → 後壁のACS。
◎II, III, aVFのQSに近いパターン。ここ悩みますね。
答えは、陳旧性の下壁梗塞(RCA)で以前PCI施行されています。今回新たに回旋枝の新たなACSが発生した、でした。臨床では、いろんな症例を経験します。
ここで、後壁の典型的な心電図を提出します。別症例です。
かなりピュアな後壁梗塞(ACS)です。V1-3のST低下がポイントですね。
この症例のV7,8,9を実際に記録しています。
V1-3のST低下 = V6-9のST上昇で、後壁のACSです。
(ミラーイメージと云う言葉が、受け入れやすい症例です)
今回は、(後壁のなぞ)に迫るお約束でした。
さきほど凹んだER研修医君は、なにくそ!と立ち直り、循環器科医に聞いてみました。
ER研修医:せんせい、後壁と下壁の違いは何なんでしょうか?
循環器科医:良い質問だ。結論は、It makes no difference(@the Band)なんだよ。
ACSは、LMTを除けば LAD, RCA, LCXのどれかなんだよ。下壁か後壁かなんて、気にしなくていいよ。ACSと分かれば、十分なんだ。そっから先は、僕たちが引き受けるから。
ER研修医:でも気になりますよ。どうやって、区別するんでしょう。
循環器科医:区別しなくて良いんだよ。肺の(上葉)/(下葉)のような境界線は、無いんだから。
ER研修医:(でも・・・・・・)
循環器科医:マジレスするとね。
*RCAの支配領域と、LCXの支配領域は、重なる部分があるんだ。ちょうど(いわゆる後壁)のあたりだ。どっちが後壁を支配するのかは、個人差としか云えない。
解剖学的に、後壁と下壁を切り分け出来ないけど、回旋枝(or右冠動脈)のACSで、V1,2,3のST低下があれば、後壁梗塞を強く示唆すると、考えればいい。
ER研修医:後壁梗塞とは、心電図上の概念なんですか?
循環器科医:存在するんだ。だけど明瞭に区分け出来ないだけ。心エコーで左室長軸断面をB/M modeで示すと、今でも後壁と呼ぶんだ。
有るんだけど、ない。シュレンジンガーの猫みたいなもんさ。
ER研修医:(そのたとえ、物理学的になんか違う。。)
でも、後壁梗塞は心電図検定試験に出るんですよ。
循環器科医:そこは、こう割り切って良いんじゃない。
*V6とI 誘導でのST上昇あれば、回旋枝 LCX-ACSでしょう。
*aVL誘導でもST上昇あれば、回旋枝 LCX-ACSしかない。
*回旋枝では、aVL誘導でのST低下は起こらない。
→基本的に回旋枝の支配流域だから。
*V1-3のST低下のみならば、たぶん回旋枝 LCX-ACSです。
*II, III, aVFのST上昇とV1-3のST低下が両方あると、まず右冠動脈 RCA-ACSです。
→#3 位のやや遠位側での閉塞です。近位閉塞だとミラーイメージが生じにくい。
*I 誘導・V6・aVL誘導に、II 誘導のST上昇が有っても、回旋枝
回旋枝 LCX-ACSです。
→II, III, aVFは、下壁の誘導としてセットで考えがちですが、II 誘導は、下壁の側壁よりを意味するるんです。回旋枝がちょっと大きいと、ここもST上昇します。
*V1-3のST低下があれば、それは後壁梗塞である。RCA由来か、LCX由来かは関係ない。なお、イコールV7-9のST上昇であり、STEMIなんです。
って、ことでどうだい?
ER研修医:理解すべき事が、多いですね。
循環器科医:経験則も入ってるから。気楽に考えよう。1級狙うんじゃ無きゃ、ここまでは要らない。
ER研修医:1級ねらうんだったら、要るんですよね。
循環器科医:マイスター狙うならね。よう知らんけど。
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医事新報社からです。
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