1.) 心電図診断は?
いきなりの心静止です。ビックリです。
ノンビリした日曜日の午後に、大変な騒ぎです。
けれど、患者さんはベッド上の安静仰臥位なので、自覚症状ありませんでした。
このモニター心電図を、じっくりと見ると。。
◎7秒ほどの心静止です。
◎*のQRSは、補充収縮(たぶんHis束レベル)でしょう。
少なくとも1発目*はP波とQRSが融合しており、補充収縮(escaped beat)としか、考えられません。
2発目*は、正常伝導かもしれませんが、PQ間隔短いですね。やはり、補充収縮かもしれません。
◎その後の心静止を経て、3発目*=補充収縮を後は、心房細動になっているようです。頻脈です。
この短いモニター記録で確定的なことは云えないけれど、かなりヤバイ状況ですね。
心電図診断は、
A.) 一過性の心静止(pause)
B.) 補充収縮(escaped beat)の発生
C.) 洞結節リズムの回復ではなく、心房細動の出現
と思われます。
2.) とりあえずの治療?
循環器医がやって来る前に、とにかくルート確保です。いつでも薬物投与できるようにしましょう。
体外式ペーシングの装着も行います。(その前に12誘導心電図記録ですが)除細動器に付いてますね。
ベッドサイドを離れずに=医師 or 看護=状態観察と、患者さんの安心確保へ。
3.) あと必要な情報は?
主治医ではないので、患者情報の収集は必須です。
今回の不整脈への対応に絞って、集めてみます。
◎バイタルサインの確認
→幸い、ベット上仰臥位では特に自覚症状ありません。
→但し、落ち着いてからよく聞くと、ふっと眠たい感じがしたりしたようです。syncope関連は、ねちっこい病歴聴取が必要です。
◎12誘導心電図チェック
→今の12誘導心電図と過去を、比較します。
◎鑑別診断は、ACS除外から。
→Sick Sinus Syndrome(SSS)は、他の除外で決まります。
→高カリウム血症。ちょっと考えにくいけど。
→心筋炎。あり得るけど、他に症状がないのは・・・。
→心筋症も、考える。
◎薬歴チェック
→ジギタリス中毒。これ、今は少ないけどあり得ます!
→β-blocker、CCB(ベラパミル・ジルチアゼム)
なお、心房静止が起きるような状況は、大なり小なり洞機能に障害があるんです。
この症例では、発作性心房細動で頻脈化するのを予防するためにワソランが120mg分三で投与されていました。
(洞調律時の12誘導心電図)
(心房細動時の12誘導心電図)
ワソランを休止した後に、Holter-ECGが施行されました。
ワソラン休止後も、心房静止が続きます。頻脈性の心房細動が停止した時に、発生しています。徐脈頻脈症候群の典型です。
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洞調律時は、安定した圧が生じています。
心房細動時は頻脈であり、(RR間隔狭まると)血圧も下がり気味です。心拍数抑制が必要ですが、徐脈・心静止を助長します。
この患者さんの治療は、
*抗凝固薬をベースに
*徐脈・心静止に対しては、ペースメーカー植込み
*頻脈は、β-blockerで対応となります
【 SSSの徐脈は、頻脈停止時に発生する 】
【 徐脈と頻脈の両方治療するお薬は・・・ないんです 】