#blog-title{font-size:150%; }

Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-333:answer

1.)  心電図診断は?

 

いきなりの心静止です。ビックリです。

ノンビリした日曜日の午後に、大変な騒ぎです。

けれど、患者さんはベッド上の安静仰臥位なので、自覚症状ありませんでした。

 

このモニター心電図を、じっくりと見ると。。 

f:id:heart2019:20190831005428j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

 

◎7秒ほどの心静止です。

 

*のQRSは、補充収縮(たぶんHis束レベル)でしょう。

 少なくとも1発目*はP波とQRSが融合しており、補充収縮(escaped beat)としか、考えられません。

2発目*は、正常伝導かもしれませんが、PQ間隔短いですね。やはり、補充収縮かもしれません。

 

◎その後の心静止を経て、3発目*=補充収縮を後は、心房細動になっているようです。頻脈です。

 

この短いモニター記録で確定的なことは云えないけれど、かなりヤバイ状況ですね。

 

心電図診断は、

A.) 一過性の心静止(pause)

B.) 補充収縮(escaped beat)の発生

C.) 洞結節リズムの回復ではなく、心房細動の出現

 

と思われます。

 

 

 

2.)  とりあえずの治療?

 

 循環器医がやって来る前に、とにかくルート確保です。いつでも薬物投与できるようにしましょう。

 体外式ペーシングの装着も行います。(その前に12誘導心電図記録ですが)除細動器に付いてますね。

 ベッドサイドを離れずに=医師 or 看護=状態観察と、患者さんの安心確保へ。

 

 

3.)  あと必要な情報は?

 

 主治医ではないので、患者情報の収集は必須です。

 今回の不整脈への対応に絞って、集めてみます。

 

◎バイタルサインの確認

  →幸い、ベット上仰臥位では特に自覚症状ありません。

  →但し、落ち着いてからよく聞くと、ふっと眠たい感じがしたりしたようです。syncope関連は、ねちっこい病歴聴取が必要です。

 

◎12誘導心電図チェック

  →今の12誘導心電図と過去を、比較します。

 

◎鑑別診断は、ACS除外から。

  →Sick Sinus Syndrome(SSS)は、他の除外で決まります。

  →高カリウム血症。ちょっと考えにくいけど。

  →心筋炎。あり得るけど、他に症状がないのは・・・。

  →心筋症も、考える。

 

◎薬歴チェック

  →ジギタリス中毒。これ、今は少ないけどあり得ます!

  →β-blocker、CCB(ベラパミル・ジルチアゼム)

  

 なお、心房静止が起きるような状況は、大なり小なり洞機能に障害があるんです。

この症例では、発作性心房細動で頻脈化するのを予防するためにワソランが120mg分三で投与されていました。

 

 

(洞調律時の12誘導心電図) 

f:id:heart2019:20190831005548j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

 

 

(心房細動時の12誘導心電図) 

f:id:heart2019:20190831005619j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

 

 

 

 ワソランを休止した後に、Holter-ECGが施行されました。

 

f:id:heart2019:20190831005712j:plain

クリックすると、心電図が拡大します

 

 

 

 ワソラン休止後も、心房静止が続きます。頻脈性の心房細動が停止した時に、発生しています。徐脈頻脈症候群の典型です。

 

 

[http://:title]

 

f:id:heart2019:20190831005827p:plain

クリックすると、心電図が拡大します

 

洞調律時は、安定した圧が生じています。

 

心房細動時は頻脈であり、(RR間隔狭まると)血圧も下がり気味です。心拍数抑制が必要ですが、徐脈・心静止を助長します。

 

 

 

 

この患者さんの治療は、

 

*抗凝固薬をベースに

*徐脈・心静止に対しては、ペースメーカー植込み

*頻脈は、β-blockerで対応となります

 

 

【 SSSの徐脈は、頻脈停止時に発生する 】

【 徐脈と頻脈の両方治療するお薬は・・・ないんです 】