1.) ACSを示唆する。
重度の不整脈発作を見た時に、ACSの除外から考えるのは、正しい考え方です。RCA-ACSだと、徐脈・房室ブロックはよく発生します。
徐脈傾向ですが、洞調律です。
CRBBBです。この影響を除けば、特にST-Tを認めません。
でも心電図だけで、ACSの否定は危ない。
この症例では、心エコーでの壁運動障害なく、トロポニン値の経時的上昇もありませんでした。
2.) 高カリウム血症を示唆する。
徐脈とwide-QRSで、もしかしたら高カリウム血症では??
気付きとしては良いのですが、この症例では
*P波はちゃんとあります。
*QRSは幅は、CRBBBで広いだけですね。
でも、心電図変化と血性カリウム値は、相関しないことも多いんです。
この症例の血性カリウム値は、正常でした。
3.) 消化管の精査が必要である。
食思不振の高齢者の上部消化管精査は、妥当です。
けれど、最初に行うかは別問題です。
この方は、貧血・肝障害はありません。高血糖も無し!
4.) 徐脈頻脈症候群(BTS)である。
BTS:Bradycardia Tachycardia Syndrome
BTSでは、徐脈と頻脈が別々に出現するのでは、ふつうありません。頻脈発作(Paf/PSVT)があり、それが停止するときに(心房から刺激が急に停止した時に)、心室がすぐに反応せず、心静止がおき脳への血流停止→失神・blackoutとなります。
BTSは、特に誘因が無くても高齢者では認める事があります。他の原因がなければ、BTSとなりますし、それは不思議なことではありません。他の原因がなければ。。
なお、BTSで頻脈停止→心房静止時に、心室の補充収縮はすぐには出てきません。そのために失神につながるポーズが発生します。完全房室ブロックのように、一旦心室の異所性ペースメーカーが作動し出すと、徐脈でも安定したHRを保ちます。
(この部分は、ひろ@循環器内科 先生にアドバイス頂きました。感謝です。)
5.) まだまだ、XXの情報が欲しい!
このXXに入る一番大きなものが、第三の病歴(薬歴)です。
この患者さんは、アロチノロールと云うαβ-blockerを服用されていました。
超高齢者は、大なり小なり洞機能不全を伴っています。浅在性の洞機能不全が、徐脈を助長する薬剤で顕性化することがあります。
幸い、αβ-blockerの中止を続ける事で徐脈・心停止は出現しなくなりました。今のところ、永久ペースメーカー植込みは無しでの経過観察です。
【 徐脈イベントは、薬歴をきっちり確認すべし!! 】