50才代の男性でした。
このER心電図のみで、ACSと決め付けるのはちょっと無理でしょう。どう判断するの
か?
=これは、De Winter T waveがらみのCRBBB-LAD ACSと読み解くべきですね。その観点で見直すと、下壁誘導のST低下があります。aVRのSTも上昇か??病変部は、LADのそんなに近位部ではありません。けれど、LCxとの二枝病変ですので、有意に捉えてよいかと考えます。2021/21/5=
普通のCRBBBの心電図との比較を、見てみましょう。
*CRBBB onlyでの穏やかなST-T変化を見て下さい。
*ER心電図は、T波がV2から伸び上がった感じです。
もっとも、症状がなければスルーするだけでしょう。
ER心電図を、詳細に解説してみます。
*V2-5、I 誘導、aVL誘導でST上昇があります。T波がやや高い感じです。
*II, III, aVFで、僅かなST低下があるようです。
これらの読みは、やり過ぎかもしれません。
安定期の心電図と比較するのが、一番良いのですが、今それは入手できません。
これに、臨床的意味(=緊急性)を与えるのは、
*現病歴(胸痛頻度増加、怠薬)・リスクファクター(脂質異常症、喫煙)・理学的所見となります。
不安定狭心症では、発作の極期しか壁運動障害が出てこないかもしれません。軽度の壁運動障害は、けっこう見慣れていないと判断に迷います。
PCIが緊急で施行されました。
[http://:title]
[http://:title]
[http://:title]
(PCIの解説図)
前下行枝の病変と回旋枝の病変の鑑別が、ちょっと難しいのですが、2枝病変です。
緊急時として、LADへのPCIが施行されました。
[http://:title]
後日、LCXへのPCIも施行されました。
経時的心電図変化です。
PCI直後より、胸部誘導のT波陰転化が始まります。X+2daysでは、巨大陰性T波(GNT)となりました。ここだけみると、たこつぼ心筋症と考えそうです。
三ヶ月後の心電図が、UAP発症前の心電図と同じなのかもしれません。
心筋酵素の変動です。
*CPK値は、正常上限の二倍を超えませんでした。以前の分類ならば、不安定狭心症です。
*トロポニン-I値は、有意の上昇ですので、ACSです。
では、コンサルトとした循環器医の言葉です。
X:これだけ典型的な症状があるのに、ACSとして扱わないの?
Y:PCI歴・heavy smoker・スタチンと(たぶん)抗血小板剤の怠薬。Xと併せてACSと考えよう。(結果が、AGMLだとしても・・)心筋酵素が上昇していないのは、サルベージする価値が高いということさ!
Z:よって、以前の心電図はないけど、これはSTEMIと考えよう!
(PCI準備を)急げ~。
です。
ブルース・リー 曰く
Don’t think, feel.