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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

コラム-109:Lead I signについて(1/2)

 

コラム-109:Lead I signについて

 

 

Lead I sign-01

 

Lead I sign  (リード ワン サイン)のお話しです。

 

初めて聞く方も多いと思います。

(危ない心電図の見分け方)を執筆していた時に、何気なく(Lead I sign)と書いたら、編集者の方に、その用語の原著ありますか?

と尋ねられました。

 

 

Lead I sign-02

 

一般的だと思っていたので、びっくりして調べてみるとCOPDとの関連で検索出来ますが、心疾患との括りではほぼ出てきませんでした。

今回は、COPDと心疾患の二つで Lead I signのお話をします。

 

 

Lead I sign-03

 

電気軸が真下を向けば、I 誘導のP/QRS/T波は、限りなく低電位になりますよ。

 

これが Lead I signです。

 

(馬から落ちて落馬した)風の当たり前のことです。

 

でも、解説してみますね。

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Lead I sign-04

 

理論的には、I誘導と直交する二つの場合が考えられます。

 

*-90° と *+90° です。

 

-90°だと、下壁誘導は全部陰性となります。

I誘導は、直交するためにP/QRS/Tの電位はとても低い。

aVRとaVLは、のQRSは陽性波です。

 

でも、現実的にはあり得ない電気軸です。

 

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Lead I sign-05

 

*+90° が、現実的な Lead I signを起こす電気軸です。

 

直交したベクトルでは、電位の上下が低くなります。

なるしかない。

 

aVFが最も高いR波を形成しますね。

aVR/aVLは、陰性波主体となります。

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Lead I sign-06

 

COPDでは、気腫性変化が強いと横隔膜が低下します。肺が膨張したためです。(肋間筋も痩せてしまいます)

 

正常例では、横隔膜という座布団に心臓は少し横座りしています。

COPD例では、横隔膜低位のために大動脈・肺動脈にぶら下がった形となります。

 

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Lead I sign-07

 

別症例のCOPDです。

心臓と胸壁が離れていますね。エコー屋さん泣かせです。

肺動脈と大動脈洞( sinus of valsalva)にぶら下がった心臓です。レントゲン的には、滴状心です。

 

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Lead I sign-07

 

COPDの滴状心と、その心電図です。

 

〇気腫により、横隔膜低位。上下方向に胸郭延長。

〇肺野は、横方向にも拡大。

◯心臓は立位となる。

◯心臓は、時計方向回転する。

 

 

◎電気軸は、限りなく真下を向く。

◎胸壁と胸部誘導の距離が離れる。

◎心房も立位状となる。

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Lead I sign-08

 

COPDでの垂直位心では、

 

*電気軸が真下(+90°)となる。

*aVRとaVFは、逆二等辺三角形の底角となる。

*つまり、aVR=aVFの波形になりやすい。

 

  • 逆に、aVR=aVFの波形ならば、(電気的に)垂直位心。

 

この症例では、P/QRS/Tが、キレイに両方下向き(陰性波形)ですね。ここまで、揃うのはそんなにありませんけど。

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Lead I sign-09

 

COPDで垂直位心になると

 

* 電気軸が真下を向くので、下壁誘導で高いR波となる。

*直交するI誘導では、当然P/QRS/T波高が、低値となる。

 

  →つまり、Lead I signです。

  →QRS波高が0.5mm以内が一応基準です。

  →この症例は、0.55mmくらいか?

 

(ここ、あんまり拘らないでね)

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Lead I sign-010

 

COPDで右房負荷があると、

 

* II, III, aVFで、尖りP波=肺性P波(0.25mV以上)

*V1,2で、P波の前半(右房成分)が尖る。

 

これは、そのような傾向にあると理解して下さい。

無くても、右房負荷はあり得ます。

数値に拘らない。ヤバいな・COPDかな?と思ったら、胸部レントゲン・胸部CT・呼吸機能検査を考える。(必ずとは、云ってませんよ)

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Lead I sign-011

 

COPDでは、胸部誘導で時計方向回転:CWR(clockwise rotation)することが多い。

心電図記録もするエコー屋さんは、疑問に思ったことありませんか?

「右心系が拡大・圧上昇してないのに、なんでCWRするんだろう?」って。

COPDにおける心臓の立体解剖のお話しです。

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Lead I sign-012

 

胸部の水平断を見ると分かりますが、肺動脈が前・大動脈が後方です。心臓は肺動脈弁・大動脈弁で吊されているので、反時計回転できません。

横隔膜が低下すると、自然と心臓は時計方向回転します。

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Lead I sign-013

 

In chronic obstructive pulmonary disease, hyperinflation of the lungs leads to depression of the diaphragm, and this is associated with clockwise rotation of the heart along its longitudinal axis. This clockwise rotation means that the transitional zone (defined as the progression of RS to QR in the chest leads) shifts towards the left.

 

http://J of Evidence Based Med & Hlthcare, pISSN- 2349-2562, eISSN- 2349-2570/ Vol. 1/ Issue 3 / May, 2014. Page 115

 

 

 

Lead I sign-014

 

COPDにおける Lead I sign の注意点は、

 

*このサインだけで、COPDと判定してはいけない。

*他の所見と複合していないと、特異度が上がりません。

 

となっています。

 

覚えきれないCOPDの心電図所見一覧です。 

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https://books.google.co.jp/books?id=RikLDgAAQBAJ&pg=PA208&lpg=PA208&dq=GOLD+3+or+4()OR3.o,95%25CI2.0&source=bl&ots=NtADYSohBQ&sig=ACfU3U2TaJ18kCblntFKfBlgMiyjMrekbw&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjRr--47JPqAhVYyosBHUowCKsQ6AEwAHoECAgQAQ#v=onepage&q=GOLD%203%20or%204()OR3.o%2C95%25CI2.0&f=false

 

books.google.co.jp

 

次回は、循環器版 Lead I signのお話しです。

 

 

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佐々木達哉先生との共著が、2020/1/23に発刊されました。

医事新報社からです。

循環器版の(思考のレッスン)です。

村川裕二先生から、素敵な(推薦の辞)を頂きました。

まずは、立ち読みして下さい。私が援護射撃した佐々木ワールドが満開です。

 

https://www.amazon.co.jp/レジデントのための循環器教室%E3%80%88症例で学ぶ循環器診療のリアル〉-佐々木-達哉/dp/4784948759/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&keywords=佐々木達哉&qid=1577794530&sr=8-1

 

 

 

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