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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

【ECG-406】answer(1/2)

まず#心電図検定試験的に判読します。

 

*調律は心房細動

*ST上昇は、V1-4

*ST低下は、下壁誘導とV6

 

LAD領域のACSで間違いなさそうです。

心尖部より心エコーを当てて、前壁中隔がたぶんakinesis.

(心尖部二・四腔像を、きちんと見る)

 

回答は、前下行枝近位部 となります。

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以前は、このような図(ST変化と梗塞領域)で、心電図でのACS診断がなされていました。常識に合う図解説明です。でも・・・

 

この表の限界点は、

 

*冠動脈の走行は、個人差が大きい。支配領域も違う。

*心電図の各誘導が持つ冗長性が大きい。

*中隔枝も対角枝も、分岐する場所がいろいろある。

*こんなに温和しく・キチンとST変化が出現しない。

 

まあ、こんなもんだよね~。と流し目で見ておくのが吉です。ちいち照らし合わせとか、やんない方がいい(←個人の意見です💦)。

 

 

 

 

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では、この心電図を詳細に読んでみますね。

 

 

 

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*調律は、心房細動です。

  ACSだと、リズムは慌てて忘れがちです。

 房室ブロックの有無も、ACS診断では大きな参考値です。

 

 

 

 

 

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他の典型的なLAD-ACSでの胸部誘導ST-T変化と比べてみましょう・・・なんか、パッとしませんね。。

ACSのST上昇は、いろんなパターンがあります。同じ症例でも、数分の違いで波形は変化します。

墓石型・ヨットの帆型・こんなマイルド型・微妙な1.0mm上昇型、etc。

経験に縛られないのもST上昇の判読ポイントです。

 

 

 

 

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LADの閉塞が近位部だと

*第一中隔枝 or/and 第一対角枝を巻き込みます

*CRBBBの新規合併(右脚を第一中隔枝が栄養する)

*側壁誘導でのST上昇

*下壁誘導でのミラーイメージ出現

 

LADの閉塞が遠位部だと

*上記がありません。

 

 

 

 

 

 

 

LAD遠位部閉塞・近位部閉塞に共通するのは、

V1-6でST上昇が有り得ることです。

 

例えば、V1でST上昇が明らかであれば、たこつぼ心筋症(apical balloonning型)が否定されます。

 

そのわかりやすい理路は、ココで!

 

https://twitter.com/rikuarai/status/1441991231509196806

 

 

Arai Riku先生のtwitterより

 

Qたこつぼ症候群ではなぜV1ST上昇がみられない?

V1は①左室基部から前壁、②右室を反映します!

 

☆理由(1)

典型的なたこつぼでは、左室基部と右室は保たれるため、V1誘導でST上昇が起こりにくい!

 

☆理由(2)

たこつぼでは、左室基部以外の左室でST上昇するため、後壁·下壁領域もST上昇する!それによって、V1はミラーイメージでST上昇が起こりにくい!

 

以上(1), (2)から、たこつぼV1不変!

 

 

LAD心筋梗塞ではV1ST上昇する(80%)

·V1が左室基部から前壁を反映するため当然!

·LADは後璧、下壁は一般的に栄養しないので、V1にミラーイメージがこない!

 

※Wrapped LADたこつぼ症候群の心電図鑑別は難しいが、やはりV1ST上昇の有無がポイント!?

後壁梗塞領域のミラーイメージ要素がない点が違い?

ここにはまだ見解がありません💦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LAD-ACS.  Proximal vs. distal の考え方です。

 

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胸部誘導の位置を、立体的に再評価します。

V1,2は右室の前にありますが、右室自由壁の変化がない場合には、左室の興奮にかなり引っ張られる形になります。

 

LAD proximalでも、LAD distalでも、

V1-6でST上昇は出現するんですね。

 

 

 

 

 

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対角枝の張り方は、個々の症例で異なります。

 

D1,2が思いっきり自由壁に張り出すと、V5,6でのST上昇が発生します。

 

D1は左室自由壁の高い部分を支配するので、I,aVL誘導のST上昇が起きやすくなります。

D1でもOM1でも、どっちでもありです。

 

 

 

 

 

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やっぱり大事なのは、

*下壁誘導でST低下するのがLAD-proximalの閉塞の場合だと理解する事です。

*これは、LMT病変でもそうですね。

*残存するRCA支配領域で、ミラーイメージが出現します。

 

この症例では、下壁誘導(II,III,aVF)でのST低下と、V5,6でのST低下があります。

 

(ミラーイメージの)下壁はともかく、なんでV5,6のST低下があるのか?

 

 

 

 

 

Pre-PCIの左冠動脈造影所見です。

 

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この解説は、answer(2/2)に続きます。