まず#心電図検定試験的に判読します。
*調律は心房細動
*ST上昇は、V1-4
*ST低下は、下壁誘導とV6
LAD領域のACSで間違いなさそうです。
心尖部より心エコーを当てて、前壁中隔がたぶんakinesis.
(心尖部二・四腔像を、きちんと見る)
回答は、前下行枝近位部 となります。
以前は、このような図(ST変化と梗塞領域)で、心電図でのACS診断がなされていました。常識に合う図解説明です。でも・・・
この表の限界点は、
*冠動脈の走行は、個人差が大きい。支配領域も違う。
*心電図の各誘導が持つ冗長性が大きい。
*中隔枝も対角枝も、分岐する場所がいろいろある。
*こんなに温和しく・キチンとST変化が出現しない。
まあ、こんなもんだよね~。と流し目で見ておくのが吉です。ちいち照らし合わせとか、やんない方がいい(←個人の意見です💦)。
では、この心電図を詳細に読んでみますね。
*調律は、心房細動です。
ACSだと、リズムは慌てて忘れがちです。
房室ブロックの有無も、ACS診断では大きな参考値です。
他の典型的なLAD-ACSでの胸部誘導ST-T変化と比べてみましょう・・・なんか、パッとしませんね。。
ACSのST上昇は、いろんなパターンがあります。同じ症例でも、数分の違いで波形は変化します。
墓石型・ヨットの帆型・こんなマイルド型・微妙な1.0mm上昇型、etc。
経験に縛られないのもST上昇の判読ポイントです。
LADの閉塞が近位部だと
*第一中隔枝 or/and 第一対角枝を巻き込みます
*CRBBBの新規合併(右脚を第一中隔枝が栄養する)
*側壁誘導でのST上昇
*下壁誘導でのミラーイメージ出現
LADの閉塞が遠位部だと
*上記がありません。
LAD遠位部閉塞・近位部閉塞に共通するのは、
V1-6でST上昇が有り得ることです。
例えば、V1でST上昇が明らかであれば、たこつぼ心筋症(apical balloonning型)が否定されます。
そのわかりやすい理路は、ココで!
https://twitter.com/rikuarai/status/1441991231509196806
Arai Riku先生のtwitterより
Q:たこつぼ症候群ではなぜV1のST上昇がみられない?
⇒
V1は①左室基部から前壁、②右室を反映します!
☆理由(1):
典型的なたこつぼでは、左室基部と右室は保たれるため、V1誘導でST上昇が起こりにくい!
☆理由(2):
たこつぼでは、左室基部以外の左室でST上昇するため、後壁·下壁領域もST上昇する!それによって、V1はミラーイメージでST上昇が起こりにくい!
以上(1), (2)から、たこつぼはV1不変!
☆LADの心筋梗塞ではV1はST上昇する(80%)。
·V1が左室基部から前壁を反映するため当然!
·LADは後璧、下壁は一般的に栄養しないので、V1にミラーイメージがこない!
※Wrapped LADとたこつぼ症候群の心電図鑑別は難しいが、やはりV1のST上昇の有無がポイント!?
後壁梗塞領域のミラーイメージ要素がない点が違い?
ここにはまだ見解がありません💦
LAD-ACS. Proximal vs. distal の考え方です。
胸部誘導の位置を、立体的に再評価します。
V1,2は右室の前にありますが、右室自由壁の変化がない場合には、左室の興奮にかなり引っ張られる形になります。
LAD proximalでも、LAD distalでも、
V1-6でST上昇は出現するんですね。
対角枝の張り方は、個々の症例で異なります。
D1,2が思いっきり自由壁に張り出すと、V5,6でのST上昇が発生します。
D1は左室自由壁の高い部分を支配するので、I,aVL誘導のST上昇が起きやすくなります。
D1でもOM1でも、どっちでもありです。
やっぱり大事なのは、
*下壁誘導でST低下するのがLAD-proximalの閉塞の場合だと理解する事です。
*これは、LMT病変でもそうですね。
*残存するRCA支配領域で、ミラーイメージが出現します。
この症例では、下壁誘導(II,III,aVF)でのST低下と、V5,6でのST低下があります。
(ミラーイメージの)下壁はともかく、なんでV5,6のST低下があるのか?
Pre-PCIの左冠動脈造影所見です。
この解説は、answer(2/2)に続きます。